不動産登記で所有権移転において時効取得という登記原因があります。
文字通りに「時効が完成して所有権を取得した」という内容の登記です。
民法第162条は、一定期間他人の物を占有した者はその所有権を取得すると定めています。
ひとことで物といっても様々ですが、
土地のような高価な物も公共物でないかぎり民法第162条の適用を受けることとなります。
他人の土地を占有し始めた人がその最初の時点で他人の物である事を知らず、
知らないことに落ち度がなかった場合には、10年間継続して占有すると時効が成立します。
仮に最初の時点で他人の物であることを知っていたとしても、
20年間継続して占有すると時効が成立します。
時効取得を立証するのは容易ではないので、
民法は更に立証の負担を緩和する規定を置いています(第186条)。
占有者は、占有の始めと終わりの時点において
自分が占有していたことを主張立証すればよいのです。
これに対して、原所有者側は反対の事実を主張・立証する責任を負い、
証明できなければ所有権まで失ってしまいます。
自己名義の土地をお持ちの方は、未然に不利益を防止するために
常日頃から土地をよく管理しておくことをお勧めします。
民法第162条(所有権の取得時効)
第1項 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
第2項 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
民法第186条(占有の態様等に関する推定)
第1項 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
第2項 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
(辻野)
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