皆さんは、債権者平等の原則という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、同一の債務者に対して複数の債権者がいる場合、
債権者全員を平等に扱わなければならないという原則です。
たとえば、AさんがBさんから100万円、Cさんから200万円の借金をしたとします。
Aさんの資力が150万円しかない場合には、
BさんとCさんはお互いの債権額の割合に応じて
それぞれ50万円と100万円の弁済を受けることになります。
つまり、BさんとCさんは、債権者平等の原則のために、
債権額の割合に応じて平等に弁済を受けることのできないお金が発生してしまいます。
そして、債権者間で貸付けの時期や貸付けにいたる経緯に違いがあったとしても、
この結論は変わりません。
それゆえ、金融機関は自らの貸付金について、
他の債権者に優先して弁済を受けることができるようにするために、
抵当権等の担保の設定を融資の条件とすることになります。
ところで、民法には先取特権という権利があります。
これは、特定の債権を持っている人について、
他の債権者に優先して弁済を受けることを認める規定です(民法303条)。
先取特権とは、文字通り「債務者の財産から先に取っていってよい」という特権であり、
債権者平等の例外です。
民法がこのような例外を先取特権に認めるのは、
先取特権がその制度趣旨のひとつとして、
資力の乏しい者を保護するという社会政策的配慮に
基づくものであるからだと考えられています。
先取特権の一つに、雇用関係の先取特権というものがあります(民法306条2号、308条)。
これは、たとえば従業員が給料を受け取る前に会社が倒産してしまった場合、
従業員が会社に対する他の債権者に優先して給料を受け取ることを認めるものです。
従業員にとって給料は生活の糧ですから、
民法は給料債権を他の債権者が会社に対して持っている売掛金債権などよりも
優先させてあげるのです。
また、先取特権のなかに、
動産賃貸の先取特権というものもあります(民法311条1号、312条)。
これは、賃借人が賃料を支払わないときには、
賃貸人は賃借人が建物に持ち込んだ物品から
優先的に弁済を受けてもよいとする規定です(民法313条2項)。
この先取特権も、社会政策的配慮に基づいていると考えられます。
しかし、一般的に考えて、大家さんは資産持ちであり、
資力の乏しい者とは考えにくいです。
そうであるならば、債権者平等の原則を曲げてまでして
大家さんを保護するのはおかしいのではないかという気にもなります。
しかし、民法はこの先取特権を認めることで、
「もしも賃借人が賃料を支払えなくなったときには、
大家さんは賃借人の物品を売ったお金から優先的に賃料を取ってかまいません。
だから、お金に余裕のない人にも部屋を貸してあげてください」、
と言いたいのです。
このように、不動産賃貸の先取特権は、賃貸人を保護することで、
最終的には資力の乏しい賃借人を保護しているのです。
法律は無味乾燥なものと思われがちですが、
その制度趣旨まで考えてみると、案外血のかよったものに感じられてくるものですね。
(千葉)
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