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2014/12/09

法律ワンポイント:「銭湯と憲法」

みなさんは、最近、銭湯に行きましたか?
わたしは、大きな風呂で手足を伸ばして心も体もリラックスをしようと、
銭湯に行くことがあります。

ところで、銭湯(公衆浴場)はかつて憲法問題として最高裁で争われたことがあります。
事の発端は、公衆浴場が適正に配置されることを企図して設けられた
距離制限規定の存在です。

この規制は憲法が保障する職業選択の自由を侵害しているとして、
最高裁でその合憲性が争われました。

銭湯を開業したいと考えている人にとって、
たまたま近くに銭湯があるからここでは銭湯は開業できませんとされてしまうのは、
憲法第22条の職業選択の自由という基本的人権を侵すものであり、
認められない規制であるはずだというわけです。

公衆浴場に関するこの規制の合憲性については、過去何回か争われましたが、
結果としてすべての最高裁判決で規制は合憲とされました。
しかし、合憲とされた理由は、同じではありませんでした。

最初の判決は昭和30年に出されました。
合憲の理由は、公衆浴場は国民保健および環境衛生上重要な厚生施設であるから、
無用な競争によって生じうる浴場の衛生設備の低下という
国民の生命および健康に対する危険を防止するためには必要な規制である、
というものでした。

平成元年にも、公衆浴場距離制限規定に関する判決がありました。
そこでは、この規制は既存の公衆浴場業者の経営を守るためには
必要な規制であるということで、
やはり合憲とされました。

自家風呂をもたない者にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場の確保のためには、
既存公衆浴場業者の経営の安定を図らなければならない、
というわけです。

合憲とされた理由の違いは、時代の違いによるものです。
昭和30年といえば、各家庭に風呂がないことが一般的であり、
多くの人が銭湯に通った時代でした。
しかし、平成ともなれば各家庭には風呂があることが通常であり、
家に風呂がないということのほうが珍しい時代となりました。

公衆浴場の距離制限規定に対する合憲性の理由の違いは、
裁判所の判断も当然のことながら時代の影響を受けるということの適例であるといえますね。

(千葉)
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