「私が母親になったら、子供にこんな苦しい思いをさせたくはない。」
「父は酒を飲むと悪いことをします。僕はお酒が嫌いですが、父は嫌いではありません。」
「母は僕を捨てました。捨てられるくらいなら、僕は生まれてこなければよかった。」
「早く病気を治してください。コスモスのような母よ。」
「私が離れていった母を憎しみつつ、慕っているように、母も私のことを思っていると思います。」
これらは、
『泣くものか』(1977年、養護施設協議会編)
に載せられている子供たちの声です。
この本には、児童養護施設で過ごす子供たちの200通以上の作文がおさめられてい
ます。
どの作文にも、親と暮らす事ができない状況をどう受けとめればよいのか、
その葛藤が書かれており、何度も胸を押さえつけられる思いで読みました。
児童養護施設では、
親の行方不明、死亡、傷病入院、拘禁、離婚等
の理由で親と一緒に暮らすことのできない子供たちが、養護及び自立支援を受けています。
この作文集を読んで、つらい思いをしながらも、力強く生きている子供たちの姿を知り、
今の自分が恥ずかしくなりました。
そして、「かわいそうな子供達...」の一言だけでは済まされない、
大きな社会問題...『貧困』や『不当労働』が
背後にあることに改めて気づかされました。
また、『児童虐待』(2006年、川崎二三彦)では、
児童虐待の定義をめぐる「しつけ」、「虐待」、そして「体罰」の関係の考察、
児童虐待を生じさせる構造と要因、
立入調査などによる保護者への権利侵害と子供の安全確保の調整
等々の問題が取り上げられ、
児童福祉司である著者が、中立的立場から問題を冷静に分析し、児童虐待防止及び児童擁護体制の充実に関する提言をしています。
いずれも知らなかった事実や視点が多く、大変勉強となりました。
私事ですが、児童養護施設でボランティアを始めるにあたり、子供達とどう信頼関係を築いていくのか悩んでいたところ、良書に出会えたことを感謝しています。
また、自分の家族の絆をみつめるきっかけにもなりました。
みなさんにも、是非お勧めしたい2冊です。
(須藤)