ある一定の事由がある場合には、相続人の意思にかかわらず単純承認したものとみなされます(民921条)。
1 選択権行使前の相続財産の処分
相続人が選択権行使前に相続財産の全部又は一部を処分した場合です(同条1号)。承認する意思が推測できるからです。従って、自己のために相続開始したことを知った上で処分した場合、少なくとも相続開始を確実に予想しながらあえて処分した場合でなければ承認したものとみなされません。
しかし、その場合でも、保存行為や短期賃貸借(民602条)は承認したものとはみなされません。相続人は選択権行使前でも相続財産を管理しなければならない立場にあるからです(民918条)。
2 熟慮期間の経過
自己のために相続があったことを知ったときから3ヶ月以内に相続放棄・限定承認しなかった場合です(同条2号)。
3 選択権行使後の相続財産の隠匿等
相続人が選択権行使後に相続財産の全部又は一部を隠匿したり、債権者を害することを知りながら消費したり、相続債権者を害そうと財産目録に記載しなかった場合です(同条3号)。債権者への背信行為に対する制裁のためです。
参考:単純承認